そのままでいい。みんなと違っていい。吃音当事者が伝える吃音症の生き方
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吃音について語られた、ある一冊の本との出会い

私は自分の吃音に向き合うことを避けていました。正直なところ、今でも自分の吃音を直視したくありません。吃音である自分が嫌で嫌で仕方がないのです。だから臭いものに蓋をするように、吃音の話をすることを避けていたし、吃音であることも認めたくなかったし、吃音であることが恥ずかしいと思っていました。

そんな吃音に対するネガティブな思いが変わりはじめる”出会い”がありました。数年前、ある新聞社のサイトで紹介されていた一冊の本の書評に目が留まったのです。それが九州大学病院の医師、菊池良和先生の著書『ボクは吃音ドクターです。』でした。

本と出会ったころ、私はもうすぐ40歳という人生を折り返すタイミングを迎えており、ふとした時間に自分の半生を振り返ることが多くありました。すると私の人生には常に吃音が付きまとい、そして吃音を言い訳に様々なチャレンジから逃げてばかりであったことを後悔し、反省していました。

「自分の人生なんだから、やりたいことをやって、もっと主体的に生きればよかった。」

そんなことを思いながら、これからの生き方について考えていたときに『ボクは吃音ドクターです。』に出会いました。

吃音なのに人と話す仕事だなんて

書評の見出しを見て、最初は読むことを躊躇しました。それほど吃音に向き合うことが嫌でした。しかし自らの吃音についてオープンに語れることが凄いと思ったし、吃音を改善するヒントが得られるのではないかという期待もあり、購入してみることにしました。実際に読み進めてみると、私は二つの大きな衝撃を受けました。

まず一つ目は、菊池先生は吃音であるにも関わらず医師として多くの患者さんと日々コミュニケーションを図っていることでした。

私は自分の吃音が恥ずかしかったので、他人に吃音であることを知られたくありませんでした。だから人との会話を避けていたし、ましてや人前で話すような場面は全力で避けていました。だからほかの吃音の方も私と同じように、積極的な会話や人前で話すことは避けるであろうと思い込んでいました。

しかし菊池先生は吃音でありながら、患者さんと会話する医師という仕事を選ばれた。本の中で書かれていますが、待合室にいる患者さんの名前をマイクで呼ぶことに苦労されたようですが、私だったらそのような仕事は絶対に避けます。だから同じ吃音でありながら、吃音を受け入れ、吃音に向き合っている人がいることがとても衝撃でした。

そしてもう一つの驚き。それは、菊池先生が感じている吃音の辛さや不安が、普段私が抱いていた感情とまったく一緒だったことです。まるで私の心を見透かされ代弁されているかのように、本に書かれている吃音に対する思いと私の思いが一致していました。その時、私だけが特別な存在ではなく、同じ思いを抱いている人がいることに救われた思いがありました。辛いのは自分だけではないと。

人生の結果や幸福、不幸に吃音は関係ない

自分一人で吃音の解決策を見出すことは、とても大変なことでした。特に子供の頃は、どうすれば吃音を直すことができるのか、そればかり考えていました。しかし次第に吃音について考える事も触れることも嫌になり、やがて吃音を隠し避けるようになりました。そんなおり菊池先生の本に出会ったことで、吃音の悩みを解決するには、まず吃音を受け入れること。吃音を避けたり隠すのではなく、吃音に向き合い受け入れることが必要であることに気が付きました。

また、たとえ吃音であっても人生はいかようにもなることも学びました。同じ吃音であっても、菊池先生は医師。私は平凡なサラリーマン。人生の結果(仕事、お金、恋愛、仲間)であったり、幸福や不幸に吃音は関係ないことに気が付きました。吃音と言うひとつの事柄に対して、それを言い訳にして出来ない自分を正当化して楽をするか、それとも受け入れて向き合い、生きる糧とするのか。吃音の捉え方次第で人生の可能性は大きく開けることに気が付かせてもらいました。

そうして少しずつ吃音を受け入れられるようになったことで、吃音で辛い思いをされている方や、悩みを抱えている方の手助けをしたいという思いが湧いてきました。私は物心ついた頃からすでに吃音の症状がありました。吃音とともに学生生活を送り、吃音とともに約20年間サラリーマンとして勤めてきました。初めにもお伝えした通り、私は人との接触を極力避けてきました。だからアドバイスできることは少ないかも知れません。それでも吃音に悩んでいる方へ何かお伝いできることがあるのではないか?そんな思いで、吃音に悩まれている方へ向けてメッセージを発信することにしました。

菊池先生が、私の吃音に対する向き合い方を変えてくださったように、私も例え一人でもいいから吃音に悩んでいる人を励ますメッセージが届けられたらと思っています。

記事のまとめ

  1. 吃音の解決には、吃音を受け入れて向き合うことが大切。
  2. 人生で得られる幸福や訪れる不幸と吃音は関係ない。
  3. 吃音に対する考え方ひとつで、人生の可能性は大きく開ける。

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