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覚えてるけど声が出なかった「はじめの言葉」 | 幼児期の吃音遍歴

大人になって分かった言葉の教室へ通った理由

私が通っていた幼稚園には制服があって、毎朝、制服に着替えて近所の集合場所へ行くと先生が迎えに来て、友達と一緒に集団登園していました。しかし時々、制服に着替えてから、母親に手を引かれて通っていた場所がありました。そこは「言葉の教室」。当時は、なぜ言葉の教室へ通うのか分かっていなかったし、そもそも言葉の教室とは何なのか分かっていませんでした。そこが吃音を矯正する施設であることは、大人になってから知りました。

言葉の教室では、通っている他の友達と一緒に学ぶことはなく、先生と二人きりでゲームで遊んだり、トランポリンがあって体を動かしたりしている時は楽しい時間でした。ただし時々、絵本を読むことがあって、その時間は楽しくなかった。すでにこの頃にはどもっていて、言葉がつっかかって話しにくいことを自覚していたので、声を出して本を読むことが嫌でした。

本を読んでいる時に言葉がスムーズに出ないと、呼吸もスムーズに行えません。言葉を出そうとするあまり息を吐ききってしまい、吐ききってもなお力を入れて言葉を吐き出そうとするので、身体を小刻みに震えさせながら全身に力を入れて、苦しい思いをしながらようやく絵本を読み進めていました。

言葉の教室へは小学校三年まで通いました。ゲームをしたり本を読んだり、先生と学校生活について話をしたりする程度で、直接吃音について話すことは無かったように思います。結果的に今でも吃音が残っていることを思うと、あまり改善効果はなかったようです。吃音は呼吸法などテクニック的なことではなく、子供の性格や周囲の環境、特に子供に接する大人(親)の性格によっても改善度合いは変わってくると思います。親がネガティブ思考だと、子供もネガティブになり、結果、吃音に対しても悲観的に捉えてしまうようになるので。

言葉の教室へ通って唯一良かったことは、オセロに強くなったこと。先生とオセロを楽しむ時間が多かったので、オセロはかなり鍛えられました。

幼稚園へ遅刻するのが凄く嫌だった理由

言葉の教室が終わると、その足で幼稚園へ向かうのですが、これがとても嫌でした。幼稚園へ行くことが嫌なのではなく、先生へ遅刻した理由を伝えなければならない(話をしなければならない)ことがとても嫌でした。当然、親が遅刻する連絡を入れたはずですが、登園したら自分からも言わなければいけないことがとても嫌だったことは、いまでも印象強く残っています。

私はその後の学校生活も、社会人になってからも、遅刻だけはしないように時間に余裕をもって行動しています。それは申し訳ないけど相手のためではなく保身のため。すなわち、遅刻して連絡を入れるような事態は絶対に避けたいためです。電話するくらいなら、30分でも1時間でも早く着いて時間をつぶした方が、断然ましだからです。その考え方は今でも変わりなく、すっかり染み付いてしまっています。

分かってる。でも話せないから怒られる理不尽

年長になってから、お遊戯会だったか音楽会だったか忘れましたが、開演前の「はじめの言葉」を友達数名と一緒に言う役を与えられ、挨拶の台詞を覚えるように言われたことがありました。どのような理由だったのか、今となっては覚えていませんが、放課後に私一人教室へ残されて、先生の前で覚えた台詞を言う挨拶の練習を行ったことがありました。台詞は頭に入っているのですが、一人で先生の前に立ち、覚えた台詞を言おうとすると、どうしても言葉が詰まってしまい、スムーズに話すことができませんでした。

なぜスムーズに話すことができないんだろう。

この時、すでに私はスムーズに話せないことを自覚していたので、覚えているのに声にして出せないことが、とても悔しかったことを覚えています。

しかしそれ以上に悔しかったのは、覚えていないのではなく、声にして言葉を出せないにも関わらず、そのことが先生に理解されず、私が台詞を覚えてこなかったと誤解されて叱られたことでした。私は台詞を覚えていました。しかし最初のフレーズが詰まってしまい声にして出せず、その後もスムーズに話せない事で「覚えていない」「覚えてこなかった」と誤解されました。その悔しさと悲しさは、40年近くたった今でも深く心に刻まれています。

スムーズに話せないことで、人から誤解されて悪い評価を受ける。だから吃音を治したい。吃音を隠したい。吃音は恥ずかしいという思いを抱くようになった原因は、このような出来事がきっかけだったのかもしれません。

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